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ジェルソミーナの歩いた道

  もしかしたら40代以上の者は、記憶にあるかも知れませんが、タイトルの「ジェルソミーナの歩いた道」は、1970年代から1990年代にかけて、中華文化圏、日本、タイ、マレーシアなど、アジアにおいて広く人気を博した台湾出身の歌手テレサ・テンの歌ったものです。

 自分も彼女の歌については、よく聞いていたのですが、とりわけ、その中でもこの「ジェルソミーナの歩いた道」は、印象に残るものです。しかし、そのタイトルの内容までは深く考えたりすることはありませんでした。

 テレサ・テン(鄧麗君)の歌う「時の流れに身をまかせ」「つぐない」「別れの予感」「愛人」「空港」「香港」「恋人たちの神話」などは、その代表曲と言ってもいいでしょう。

アジアの歌姫と呼ばれたテレサ・テンが亡くなってはやくも25年、現在でも時折特集番組が放送されます。

 彼女の運命についてもまた興味深いものです。父親は中国河北省、母親は山東省出身ですが、1949年に中国本土での内戦に敗れ中国に渡っています。

彼女は、1974年、21歳の時に日本での歌手活動を開始しますが、最初の曲はあまり売れず、アイドル歌手から歌謡曲路線に変更し、彼女にとって日本での2作目となる「空港」が大ヒットして、レコード大賞新人賞を獲得してトップスターの仲間入りを果たしました。

 さて、「ジェルソミーナの歩いた道」は、フェデリコ・フェリーニ監督作品『道』(伊:La Strada)に登場する主人公ザンバノが買い取った道化師の格好で芸をする少し頭の弱い女の子。

ストリーは、道化師たちの悲哀の物語。破天荒な監督フェリーネの人生が反映されたものと言われています。

 この映画の主題曲は、後に歌詞がつけられ、日本でも第8回NHK紅白歌合戦で、「ジェルソミーナ」(訳詞;音羽たかし)として中原美沙緒が日本語歌詞で歌っています。

また、ザ・ピーナッツやカルメン・マキ、宮城まり子、島田祐子なども歌い、沢田研二、美輪明宏は自ら作詞して歌っています。

ごく最近では、2010年のバンクーバー冬季オリンピックでフィギアースケート男子シングルスで高橋大輔がこの曲を採用して銅メダルを獲得している。

 何気なく聞き流しているものにも、その奥にある物語を知ることは、聞くことの楽しみを増すことになるかも知れません。

 

(参考)

 映画「道」の内容やテレサ・テンの生い立ち等については、「ウィキペデイア」等からの引用を多く含みます。

 

テレサ・テン「ジェルソミーナの歩いた道」

作詞者 門谷 憲二

作曲家 丹羽 応樹

 

振り向かないでドアを閉めていって

あなたの冷めた愛を

いたわりに変えないで

許してあげる心変わりなんか

 

あなたの好きな人を

ひたすらに愛してあげて

どれだけ愛したか

それだけがすべてだから

私は大丈夫こんなに元気よ

 

ジェルソミーナの歩きつづけた

涙とそよ風の道を

私も今歩き始める

両手を広げて

 

確かなものはなにもないにしても

寄り添いあえる人には

もう一度逢えたなら

どれほど愛せるか

それだけがすべてだから

女に生まれたから女にいきたい

 

ジェルソミーナの歩きつづけた

涙とほほ笑みの道を

私も今歩き始める

両手を広げて

 

ジェルソミーナの歩きつづけた

涙とほほ笑みの道を

私も今歩き始める

両手を広げて