· 

秘策

 昨年2月の新聞記事ですが、最近の日本のスピードスケートの活躍もめざましいものがあります。良い成績を残す事で、マスコミに取り上げられ、その結果として、スポーツ人口が増え、必然的にレベルが上がることは、ありがたいことです。

 今までの日本のスポーツと言えば、野球がその中心を占めていました。男子にとっては、長い間メジャーなスポーツだったのです。

メジャーリーグは雲の上の存在だったのですが、野茂選手や松井選手、最近では大谷選手などが活躍するのを見て、その後を追いかけようとする少年たちも多いはずですが、現実には、野球少年たちは年々減少傾向にあるようです。

その理由は定かではありませんが、少子化やスポーツの多様化もそうですが、日本的な指導体系も影響してのではないかと思われます。今の若い保護者たちは、封建的な教育環境が否定された時代に育った世代ですから、まだ封建的な指導環境から抜け出し切れずにいるスポーツには拒否感が働くのかもしれません。

子どたちもサッカーやバスケットボールなど、以前はマイナーであったスポーツが、だんだんメジャー化することとなった結果、魅力を感じるようになったのかもしれません。

 遠い昔、強豪選手が存在したバドミントンや卓球も、十分にメジャー化するチャンスはあったのですが、決してメジャースポーツにはなり切れませんでした。しかし、ここ最近の様変わりの要因は、活躍する選手ばかりではなく、メディアの影響も否定できません。

また、一握りの有名選手だけの昔とは違って、層の厚い若手の活躍もその理由ではないでしょか。

テニス界も大阪選手や錦織選手の活躍が目立ってきましたが、この二人に頼る層の薄さは気になるところです。

 世界で活躍する選手たちは、そう簡単に檜舞台舞台に立てたわけではありません。スピードスケートの記事にもあるように、強くなるための特別な秘策などがあったわけではありません。旧態依然とした指導体系の見直しや科学的なトレーニング、そして、よりハードな練習が、そうした結果を生み出したのです。以前のバドミントンナショナルチームは、練習はそれぞれ所属するチームに任され、ナショナルチームとしての合宿もなく、試合前に急遽召集され、試合に臨むといった状況だったようです。それが、現在の朴監督率いるナショナルチームに変わってからは、多くの合宿を重ね、所属チーム以上に厳しい練習が課されていると聞きます。選手を抱えるスポンサー企業優先の状況からナショナルチーム優先の方向ずけも大きく飛躍した要因かもしれません。朴監督の言葉「負けても悔しがらず、関係ないというような顔だった。気持ちも弱くらいの、勝てそうな試合にも負ける。パワーもすピードもあって、伸びる可能性は感じた。試合と練習は一緒。練習から絶対勝つという気持ちが必要。練習で打てないショットショットが、プレッシャーのかかる試合で打てますか。」飛躍したスポーツの指導者の多くが外国人コーチであることは、気になるところです。外国人コーチと日本人コーチの違いはその指導体形の違いかもしれませんが、それ以上に取り組む姿勢によるのかもしれません。

あまり変化を求めない日本の指導体系や姿勢に対して、新たなものを追い求める外国の合理的な指導体系が優った結果なのかも知れません。

そういう点からすれば、日本人コーチが、旧態依然とした自分の経験をもとに指導することは、今の時代にそぐわないと言えるでしょう。

とは言っても、日本の指導体系を全否定すれば、それで済む訳ではないでしょうし、日本的な指導の長所もあるわけですから、そてぞれの長所の融合を目指した指導体系を生み出していくことが、これからの指導者に求められることになるでしょう。

いかなる指導にも絶対ということはありません。指導者に求められるものは、過去の経験にとらわれることなく、新たな手段や方法を追い求め、その実践が必要なことは確かです。