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五木 寛之

 暇にまかせて、五木寛之の作品を何冊か読みました。だいぶ以前ですが、映画『燃える秋』の主題歌について述べたことがあります。

あらためて、その原作の『燃える秋』と人生についての言葉集『あなたの人生を、誰かと比べなくてもいい』、そして、人生訓とも言うべき『幻冬の門』です。

 

 『燃える秋』は、「亜希」という主人公の女性がペルシャ絨毯との出会いをきっかけにしてイランの五千年の文化と歴史を知り、愛や自らの幸福よりももっと大切なものがあることを見い出し、自分の生き方を発見していく物語です。当然、虚構の世界を描いたものですが、主人公の「亜希」が、老齢の画商、影山という人物の愛人同様の今までの生き方を変えようと、祇園祭の京都に旅したところから物語は始まります。

祭りの宵山の雑踏の中で、自分と同じように「山の胴」にかけられたペルシャ絨毯を見つめる商社員の岸田を知り、互いが心惹かれていることに気づく。しかし、彼女は岸田の求婚を断り、何かに取り憑かれたようにイランに旅発ってしまう。

そうした旅の途中、高熱で倒れた亜季が意識を取り戻すと、そこには岸田の顔があった。

全てを投げ出して「愛希」のもとに駆けつけた岸田の気持ちに感動し、再度の求婚に素直に頷くが、帰国の飛行機の中で、岸田のアタッシュケースの中に詰められた絨毯製作の写真や同じデザインの絨毯を機械で織らせようとする岸田の考えや言葉に対して、貧しい人たちが何年もの手間ひまをかけて織り上げる絨毯に、なにかしらの違和感を感じてしまう。

 愛し合っていれば意見が違っても一緒に暮らすことはできるという岸田の言葉に対しても「女には愛と幸福があればいいのだとは思えない。もっと何か大切なものがあるはずだ」と悩んだ結果、「亜希」は、空港に着いたら岸田との愛に決別し、愛というオアシスに立ち止まることなく、独自の道を歩いて行こうと決心する。

 

 こうした女性の生き方には、昭和の女性の生き方に通じるものがあるように感じますが、はたして、平成を生きた女性たちの目には、どのように映るのでしょうか。