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悪魔と天使

 AIRYUのクラブ員を代表するKさんは、県のトップを目指す選手であり、常に闘志満々のプレーをするのが彼女の持ち味です。

しかし、時には怒り狂うライオンのような状況に変化してしまう時があります。見る者はもちろん、相手選手にもその態度の急激な変化がわかるほどなのです。

闘志の空回りの状態になり、自分の感情をコントロールできない状態に陥ってしまうのでしょう。

もちろん、ゲームの展開が順調である時には、そんな状態には陥ることはないのですが、不本意な展開になった時こそ、そういう状況に陥ってしまう可能性が高いのです。

こうした状況は、世界的なプレーヤーにおいても見られることですから、「それが彼女の特徴」と割り切ってしまえば簡単なのですが、やはり、もっと上位を目指すためには、改善しなければならない課題なのです。

 そうした状況を生み出すのは、彼女の「心」の問題と割り切ってしまえば簡単ですが、それでは、問題解決にはなりません。

そもそも、「心」という概念は、辞書的にも多義的で抽象的です。

それでは、彼女の感情を突然に乱し、プレーの方向性さえも見失わせてしまうのは「心」のどのような作用なのでしょうか。

 宗教的には、人間の「心」の状況を「善」と「悪」に分けたり、「天使」や「悪魔」に分けたりもします。

こうしたとらえ方からすれば、突然に心を乱し、感情を爆発させる瞬間は、彼女の「心」を「悪魔」が支配している状況であり、平静なプレーを続ける時は、彼女の「心」に「天使」が宿っている状況と言えるでしょう。

 指導する立場からすれば、彼女が少しでも平静なプレーを長く続けられる状況、つまり、彼女の「心」に宿った「悪魔」を少しでも早く追い出し、「天使」を招き入れる手段を講じることが大切なのです。

しかし、そんな時には「もっと集中しろ」などとコーチングしがちですが、子どもたちは「集中するってどういうこと?」と、さらに心の混乱を生み出してしまうかもしれません。

 子どもたちの「心」に宿った「悪魔」の呪縛を解放の手段は、「集中しろ」だけでは、難しそうです。

「悪魔」の呪縛からの解放の手段は、「シャトルのコルクをしっかり見よう」「数を数えて見よう」「大きく深呼吸をしよう」「胸に手を当てて見よう」「ガットのズレを直そう」などなど、強いチームのコーチなどには、当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、これこそ「天使」を導くための大切な呪文ではないでしょうか。

もちろん、子どもばかりではなく、時には、サイドコーチをする大人たちの「心」にも「悪魔」は宿りますから、そんな時には、さり気なく自分なりの「呪文」をとなえ、「天使」を導くことを心がけることが必要なのかもしれません。