· 

自分の存在

 4月23日のNHKテレビ番組「Family History」を見ました。今回の登場人物は音楽家坂本龍一さんです。父母や祖父母たちの歴史をたどり、出演者の現存を描く番組ですが、坂本さんはもちろん、見る者の涙腺を十分にゆるませるものでした。

 現在の自分の存在には、父母が存在し、その父母の存在には、祖父母の存在があったわけです。

しかし、特別な存在の家柄であり、確かな家系図が存在しない限り、一般人が何代も前まで、その家系をたどることは難しいかもしれません。また、たどるにしても、その方法さえもわからないでしょう。せいぜい、暮石に刻まれた先祖の呼称ぐらいでしょうか。

 現在の自分の存在については意外と無頓着なものです。もちろん、この人間世界に自分が存在することに対して、精神的な矛盾は感じますが、生理的な矛盾は感じないものです。

自分がこの世に存在するに至った歴史をたどることは、精神的に感じていた矛盾をも解消するようです。

自分も含めてですが、全ての人が素晴らしい歴史を刻むことは難しいことです。しかし、平凡に思える日々の生活を精一杯に生きることも、子孫たちにはなんらかの影響を残すのは確かです。決して、大富豪や時代の権力者の存在でなくても、また、いがみ合う親子関係にあっても、その役割を十分に果たすことが、親としての存在ではないでしょうか。

 人生の大部分を消化した現在、自分の知る限りの父母や祖父母の生き方をたどって見たいものです。まだ、それぐらいの時間は残されているでしょうから。