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ユーミンもムーミンも知らない子どもたち

 子どもたちの保護者の世代であれば、「ユーミン」も「ムーミン」も知っていて当たり前の世代だと思うのですが、その子どもたちにとっては、首をかしげる者の方が多いかもしれません。

「ユーミン」については、あくまで音が似ているということで取り上げたのですが、「ユーミン」は、自分たち世代を代表的する松任谷由実(旧姓荒井由実)さん、70年代から活躍する息の長いシンガーソングライターです。そのアルバム売り上げは、多くの年代にわたり首位の立場を獲得しています。

一方、「ムーミン」は、フィンランドの作家トーベ・ヤンセンの作品『ムーミン・シリーズ』に登場する主人公「ムーミントロール」の略称あるいは愛称です。

日本では、1970年代からテレビアニメーションとして放送されていますから、その物語の内容までは無理かもしれませんが、そのキャラクターについては、子どもたちの中にも十分に知る者は多いと思われます。

 話は変わりますが、つい先日、2018年1月の大学入試センター試験(本試験)の「地理B」で、アニメ版「ムーミン」に関した問題が出題され、ネット上で話題を呼びました。

その論議の中心は「ムーミンの舞台はどこなのか(諸説ある)」「与えられた出題内容のみで正解が得られるか」などでした。

また、Twitter上では、センター試験と「ムーミン」というギャップ、「地理」の問題とアニメの世界は、あまりにも似つかわしくないのでは、ということなどが騒動の中心でした。結果として、センター側の会見や文部科学大臣、内閣官房長官の見解表明にまで至ったのですが、センター側は「キャラクターの知識は直接必要なく、地理Bの知識・思考力を問う設問として支障はない」というものでした。

この問題とは直接関係はありませんが、教育現場に携わった一員として、最近つくづくと思うことは、最近の生徒や子どもたちへの生活指導面での教師の対応の大変さは勿論なのですが、教科指導面においてもその変化に対応することが大変になってきているということです。

教科書が教典(教科書至上主義?)としての存在だった自分たちの世代から、時代は大きく変化したにもかかわらず、「そこに教科書があるから」と居直る教師の存在もまだ少なからず存在することも確かです。

つい先日、平成22年度から実施される高校の学習指導要領の改定案が公表されました。

教科・科目の大幅な変更があり、再編や新設される科目は27科目にも上ります。

また、すべての授業にアクティブラーニング(生徒が能動的に学ぶことができるような学習方法)の手法を導入することが明記されました。

必修科目「公共」の新設や今年の4月から小中学校においては、教科となる「道徳」を高校まで広げることをも述べられています。

小中学校の「道徳」については、当然その評価をしなければなりませんから、そうしたことも小中学校現場の緊急の課題と言えるでしょう。

そんなこんなで、変化に対する教師の対応力が、ますます求められる時代になってきたことは確かです。現場の教師たちがマニュアルがなければ何もできない、といった指示待ち状況から脱して、教師自らの創意工夫がさらに必要になることは確かなのです。それに反して、今盛んに論議されている国民の仕事量の軽減にどれだけ繋げていけるのか、相反する命題を突き付けられた教師たちの愚痴が今にも聞こえてきそうです。