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Good Luck

 人生を過ごす上で、私たち誰もが幸運にめぐまれたいと願うはずです。しかし、全ての人が幸運の女神に出会えるとは限りません。幸運は待つだけでは訪れてこないことは、誰もが十分に承知しているのですが、ついつい運に頼ってしまうものです。

   前回と同様になりますが、10年以上前にベストセラーになった本を紹介しましょう。短編ですから、1時間もあれば十分に読み切ることができます。今回は、我がクラブの上級生にも読むことをすすめてみたいと思います。

 

 ある春の午後、セントラルパークのベンチに腰掛けていた主人公マックス、偶然に隣り合わせたのは、仕事も、財産も、全てを失い、絶望の淵にある旧友のジムであった。

物語は、この二人の54年ぶりの再会から始まる。

 マックスは、ジムに対して、祖父から聞かされていた、運と幸運の違いを知るための「魅惑の森」の話を始める。

 

 はるか昔、一国の王に仕えた徳の高い魔術師マーリンとそれに仕えた黒いマントの騎士ノットと白いマントの騎士シドの話である。マーリンは多くの騎士達を前に国の永遠の平和を保つために魔法のクローバーを探すことを命ずる。

それは、広大な「魅惑の森」に生えるという。しかし、その話を聞いて残ったのは、この二人の騎士だけであった。広大な魅惑の森に生える魔法のクローバーは、その日から数えて七日目の朝に生えるという。二人の騎士はマーリンに別れを告げ、城を後にする。

森に向かった二人の騎士は、それぞれの工夫と想像を巡らし、魔法のクローバーを探し求めるが、彼らの前には、数々の困難が待ち受けるだけであった。

 果たして、魔法のクローバーを手に入れた騎士は、どちらであったかについては、この物語を読んでいただくことにしましょう。

 

 また、この物語のそれぞれの章には、その内容についての言葉が付いています。

○「運は、呼びこむことも引き留めることもできない。幸運は、自らの手で作り出せば、永遠に尽きることはない。」

○「誰もが幸運を手にしたがるが、自ら追い求めるのはほんのひとにぎり。」

○「幸運が訪れないからには、訪れないだけの理由がある。幸運をつかむためには、自ら下ごしらえをする必要がある。」

○「欲するばかりでは幸運は手に入らない。幸運を呼びこむひとつのカギは、人に手をさしのべられる広い心。」

○「下ごしらえを先延ばしにしてしまえば、幸運は絶対に訪れてはくれない。どんなに大変でも、今日できることは今日してしまうこと」

○「自分の知っていることがすべてとは限らない。幸運をつかむには、あらゆる可能性に目を向けなくてはならない。」

○「偶然しか信じぬ者は、下ごしらえをする者を笑う。下ごしらえをする者は、何も気にしなくていい。」

○「幸運をエサにするような人は信じないこと。幸運は売り物でも、道具でもないのだから。」

○「できることすべてをやったら、焦らず、あきらめぬこと。自分には必ず幸運が訪れると信じ、甘い言葉には耳を貸さぬこと。」

○「幸運を作るというのは、チャンスに備えて下ごしらえをしておくこと。だがチャンスを得るには、運も偶然も必要ない。それはいつでもそこにあるものなのだから。」

○「幸運を作るというのは、つまり、条件を自ら作ることである。」

○「幸運の下ごしらえは、自分にしかできない。幸運の下ごしらえは、今すぐに始めることができる。」

○「幸運のストーリーは・・・・・、絶対に偶然には訪れない。」

 

 何をするにしても、目標達成のためには、数々の困難が立ちはだかり、その高い壁を乗り越えること、そしてそのためには、運に頼ることなく、知恵と努力と創造力を働かすことが必要であることを、我がクラブの子供たちにも理解してほしいものです。

 

引用作品 

2004年6月22日第1刷発行『Good Lack』(ポプラ社)

著者

アレックス・ロビラ 

フェルナンド・トリアス・デ・ベス 

訳者

田内 志文