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旅立ち

 無機物、有機物に関わらず、この世に存在するありとあらゆるものが無常であることは、誰もが認識することなのですが、とりわけ、人の死に接するごとに、無常についての思いを強くするのは、私ばかりではないでしょう。

 先輩であり、恩師でもあり、そして、上司であった人が、今日、多くの教え子や仲間たちに見送られ、旅立ちました。93歳の大往生でした。

生身での付き合いの時には、その思いの一端すら伝えることもかなわなかったことについては、殊更に悔やまれますが、思いの程は、言わずもがなということにしましょう。

多くの人々に慕われ、尊敬された先生でしたが、その温厚な人柄が、敵をつくらず、慕われ、尊敬された理由なのでしょう。

 生き方の真似をすることは簡単ではありませんし、それぞれの独自の生き方こそが、それぞれの人生をつくるはずです。しかし、我が残された人生においても、先生の生き方を参考にした修正を試みることも必要なのかもしれません。

しかし、死後の賛辞を意図した生き方をしようというわけではありません。そうした生き方こそ邪道というものでしょう。

 先生の魂の鎮魂と早逝した令息、令嬢たちとの来世での邂逅を願わずにはいられません。