· 

思秋期

 最近はNHKの深夜放送を聞きながら就寝することが多くなりました。タイマーをセットして、大体はセットした時間前には眠ってしまってしまうことが多いのですが、それでもなかなか眠れずに、そのまま放送を聞き流すこともあります。

 遥か昔、受験勉強最中の若者たちが、民放の深夜放送にフィーバーした時代を思い出します。当時は、個性豊かな担当者が、若者たちを引きつけていたのですが、今聞くNHKについては、その対象は高齢者の私たちであるようです。送られるリクエストメールでは年齢はあまり定かにされませんが、その内容からは容易に想像出来てしまいます。

 民放の場合は、聞く者の層をもっと若く設定しているとは思いますが、今の若者が、それほど、深夜放送を聞いているとは、とうてい想像することが出来ませんから、NHKは、時代を踏まえた放送を心がけていると言えるでしょう。

 番組は、ゲストとの語りとリクエスト曲の演奏で構成されているのですが、リクエストは、まさしく、昔若かった者たちにマッチした曲ばかりですから、年齢層は容易に想像出来てしまうというわけです。

 それはさておき、今夜の放送では、岩崎宏美の歌う「思秋期」が流れています。歌った彼女は、高校を卒業したばかりだったでしょうか。

当時は、彼女の若さと輝くような歌声に魅了されて、歌詞の内容までは深く考えることもありませんでしたが、あらためて聞いてみると、気持ちは十代に戻ったようで、しみじみと胸打たれる思いになったというわけです。

 「思秋期」は、おそらく医学的な言葉ではないでしょうが、人生を区切ると、乳児期、幼児期、学童期、青年期、成人期、老年期などに区分することができますが、「思秋期」をこうした区分に当てはめるとすれば、どの時期に当てはめるのが適当なのでしょうか。

「思春期」という言葉もありますが、医学的には、第二次性徴が現れ、精神的にも大きな変化が現れる頃と言われますから、それが「青年期」の前期と考えれば、「思秋期」は「青年期」の後期でしょうか。

 同時代、「青春時代」という曲も一世を風靡しましたが、「思秋期」は、いわば、「青春時代」の吹き出物だったのかもしれません

私たちの世代にとっては、青春時代は遠い過去への忘れ物となってしまいましたが。こんな言葉もあります。

 『青春とは、人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ』・・・と。

しばしば、人間は物事を自分に都合いいように考えたくなるものです。そうでもしなければ、生きる目的も無くなってしまいますから。