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通信

 久しぶりに気が置けない人からの手紙がありました。綴られた美しい文字にはいつも心が驚かされるものです。手紙には、会話をするのとはまた違った豊かな趣きがあるものです。

意志の疎通には、直接、面と向かって会話をするのが一番手っ取り早いのでしょうが、それはそれで、必ずしもベストであるとは言い切れないような気がします。

事務的な会話であれば特別に問題は無いのですが、内容に私的な感情が絡むようなものであったりする場合には、目の前の相手の表情の変化が見えたりすると、何かとちぐはぐになったりして、うまく意志を伝えることが難しいこともあるわけです。

 若者たちの通信手段は、もっぱら、PCやモバイルを使ったデータ通信ということになるでしょう。電源が入っていれば、即刻、こちらの用件が相手のもとに届くのですから、手紙に比べれば、時間的には最高な手段であるわけです。

また、相手が目の前にいるわけではありませんから、自然体で自分の意志が伝えられるというメリットもあります。ただ、相手の表情は見えないわけで、相手に対する配慮という点では、問題がないわけではありません。時には、一方的で、独り善がりなものになってしまう危険性もあるわけです。

しかし、時間的なものを気にする必要がない場合でも、やはり手紙を書くということには、かなりの抵抗を感じるものです。内容を考えるということでは共通なのですが、ペンを使うか、キーボードを使うかが問題なわけです。キーボードであれば、下手な文字を相手に見られることはなくなりますから、それはそれで、救われる境地なのです。

 昔から、「色白美人は七難隠す」と言い、「手書きの文字は、その人の性格を表す」などと言いますから、蛇がぬたくるような文字の持ち主にとっては、それこそ一大事なわけです。手紙が通信手段の中心であった昔は、美しい文字の習得はまさしく、一石二鳥であったわけです。

今の時代にあっては、文字下手については、PCが取って代わってくれてはいますが、相手からの美しい手書きの手紙に対して、PC文字での返信ではあまりにも失礼では ?  ・・・と考えてしまうのです・・・。

しかし、これは自分だけかも知れませんし、多くの文字下手のものにとっては、PCが時代の利器であることに間違いはないでしょう。